変化の激しい世界、長く低迷している日本経済。
日本市場の中でも、白物家電ではヒット商品は、ダイソン、ティファールを代表とする海外メーカーが台頭してきています。
この現状を打破するためには、常にイノベーション人材を創出し、魅力ある新製品、サービスを作り出していかなければならない。
こういう文面は、ここ30年言われ続けていますが、大手日本メーカーからは出てこないのはなぜでしょうか。何が悪いのか、何が足らないのかを考えていきましょう。
イノベーションのタイプ
30年前の日本では、特に映像機器の家電業界においては、多くのイノベーションが起きていました。独自開発をキーワードに掲げ、各社しのぎを削っていました。そこには、間違いなくイノベーション人材が存在していました。
なぜ、今は見いだせないのでしょうか。
イノベーションは、大きく分けて2つのタイプがあります。
クローズドイノベーション
研究・開発・製造まで一貫して自社内でおこない、新たな価値を創造し知的財産として独自性を持たせ商品価値を更に上げていく。
1990年代以前の日本では、まさしくクローズドイノベーションにより、デバイスから完成品までの一貫生産方式でノウハウの流出を防ぎ、付加価値の内部留保に努めていました。
他社との差を明確にすることが、成功であり業績も上がると信じていたのです。
電機業界でも、映像デバイスに関してはCRT、液晶、プラズマと多くのイノベーション製品が出てきて国内外でしのぎを削っていました。
世界シェアも日本企業が全体の60%以上を占め、日本No.1=世界No.1の企業となっていたのです。
オープンイノベーション
社外の組織・機関と協同して知識・技術・ノウハウを取り込み新たな価値を創造します。
海外の企業では、オープンイノベーションによる成功事例が出だしました。
オープンイノベーションは、2003年バークレービジネススクール教授のヘンリー・チェスブロー氏が提唱したコンセプトで、「知識のインフローとアウトフローを活用しイノベーションを内部、外部で引き起こし市場を拡大する」と定義しています。
例としては、IT系でIBMがオープンソースソフトフェアのLinuxのように外部で開発された新技術を取り込んでグローバルサービスを立ち上げました。
クローズドイノベーションの実態と課題
映像デバイス開発の終焉は半導体事業と同様に、中国、韓国に代表される大資本の背景がありました。中途半端な規模の日本企業は新しい大規模の製造ラインに投資することが困難となり、年を追うごとに衰退していきました。
技術力よりも資本力がものをいう時代になっていったのです。
クローズドイノベーションの代表的な分野では、デバイス工場からセット工場までの一貫した巨大な設備投資が必要になります。
その中で技術革新の競争が起き、更なる設備変更による投資が重なっていきます。
日本企業にとって、クローズドイノベーションの限界がみえてきました。
囲っていた独自性のノウハウも、思惑通りに利益につながりません。他社からは特許回避の技術の開発や、クロスライセンスによる特許費の削減交渉がおこってきていました。
一貫生産のうま味が削がれ、見切りをつけてデバイスの他社からのOEM生産に切り替わっていきました。
そんな背景の中でデバイスの変革も起きていきテレビでは、CRTから、液晶、プラズマへと変遷し、今では有機ELが液晶に取って変わろうかとしています。
イノベーションは変革により価値を生み出すことですが、自社においては何を変革していくのかを会社として定義することが大事です。
一方車業界では、トヨタがハイブリット方式、燃料電池方式、EV方式と1社で切り開いているのは脅威に値します。
今も技術提携を他社と進めていますが、今後ますます提携は進んでいくでしょう。
なぜ、電機業界のように海外の会社が参入しないのかは、トヨタとの技術格差が付きすぎたために参入障壁が高くなったのでしょう。
特に欧州からは、環境問題を持ち出してEV方式に統一するような働きかけが起きています。1つの見方としては、闘うステージを変えようとしているとも考えられます。
トヨタの強すぎるクローズドイノベーションですが、決して他社を排除するような動きではありません。オープンイノベーションも今後出てくると思われます。
企業が求めるイノベーション人材
イノベーションとは、現状の課題を抽出し新規の解決策を生み出す。時には改革を要する策を打ち出すこともあります。要は課題の抽出が一番大切なのです。
先述の映像機器はレッドオーシャンの真っ只中にあるので、如何にブルーオーシャンを見付けるかが、最大の課題になってくるでしょう。
時には、違う分野への事業展開を考えなければならないかもしれません。これは担当者だけの領域にとどまらず、事業場長の判断を仰ぐ必要があるかもしれません。
イノベーションには5つの種類があると言われています。
・プロダクトイノベーション (新しい製品、サービス)
・プロセスイノベーション (製造方法、工程)
・マーケットイノベーション (新たな市場)
・サプライチェーンイノベーション (材料供給、ルート、在庫管理、配送)
・オーガニゼーションイノベーション (組織変革)
従来は製品に目が向きがちで、プロダクトイノベーションだけがイノベーションと思いがちでした。
すべての職種で改革を要する必要があり、各職種でイノベーション人材が育成され相互に連携することによって会社として大きな活力になっていくのです。
日本でのイノベーション創出の課題
なかなか元気が出てこない日本企業において、イノベーションを作り出していく課題を整理してみましょう。
長期の投資ができない
本業の経営不振が続き、再投資ができにくい体質になっています。自然とイノベーションに投下する時間、コスト、人材を確保することが難しいので、短期な取り組みで成果を望む傾向になります。
新規な発想が生まれにくい
日本企業は根強い自前主義があり、過去の成功事例の多くもクローズドイノベーションでありました。よって、オープンイノベーションで成果を上げることには不慣れです。
しかしながら再投資ができにくい企業では、コスト、時間、人材の面からもオープンイノベーションで成果を上げられる柔軟な取り組みが必要になります。
不慣れな取り組みに挑戦できる組織、風土に変革することが課題と言えるでしょう。
経営層の意識改革
イノベーションを起こしたいのであれば、企業の意思決定者である経営層が意識改革を行い、自社をイノベーションが起こりやすい体質へ変えていく必要があります。
その為には、次の視点を取り入れた施策が必要になります。
- 顧客目線の現場の意見を拾う
- 出る杭を打たずに伸ばす
旧泰然とした組織では、”過去に事例がない”などで実施が困難なケースを多く聞きます。まずは事例を増やす取り組みを始めてはどうでしょうか。
まとめ
日本企業は過去多くのイノベーションを起こしてきました。
成果が大きい分、反動も大きく、ここ30年間は低迷を続けています。
既に一回り以上世代は回っているので、ここらあたりで真の課題を彫り起こしましょう。
そして些細なことでもイノベーションを起こし続けて、日本経済の復活を成し遂げていきませんか。